オンライン学習会で、宮内先生や仙仁氏の講演の中でから、ピート・アウドルフ氏のナチュラリスティックガーデンについて話題に上がりました。
以下、アウドルフ氏のガーデンについて、簡単にまとめたものです。
ピート・アウドルフ(Piet Oudolf)氏は、現在、世界的に活躍するランドスケープ・デザイナーである。彼はオランダ人で、オランダ国内だけでなくアメリカやカナダなど北米でも活躍している。ニューヨークの廃線になった高架貨物鉄道を利用し作庭した空中庭園、New York High Line park(以下、ハイライン)が最も有名である。
ハイラインは、1933年に完成したニューヨークを縦断する貨物列車のための高架鉄道で、1980年に運行が廃止された。ハイライン・パークは、廃線跡を再利用、再開発し公園に転用したもので、延べ2.1キロメートルの公園で、2009年6月にオープン、5年の歳月を経て完成した。
現在、メトロポリタン美術館やMOMA(ニューヨーク近代美術館)、ニューヨークのシンボルである自由の女神と並ぶ、観光施設訪問者数の上位となり、人気のスポットとなっている。
*「廃線を活用した都市公園開発 」 財団法人 自治体国際化協会」
アウドルフ氏が手がける庭は、ナチュラリスティック・ガーデン(naturalistic garden)と呼ばれている。アウドルフ氏が作る庭が、ナチュラリスティック・ガーデンと呼ばれることを理解するために、ハイライン・パークの植栽コンセプトを以下に列記する。
1)植栽する植物は、ニューヨークの土地に合う丈夫で乾燥に強く、維持管理の手間のかからない種類を選ぶ。また、野生生物の住処を提供する。
2)ガーデンに必要な資材や植物は、160km圏内で調達する。植えられている植物のほぼ半数は、この地域に自生する種類である。これらの植物は地元の生産者によって栽培されている。ニューヨークの気候に合う植物は丈夫でこの地に根付くため、植え替えの必要が少なく、維持管理の費用がかからない。
3)乾燥に強い植物を選んでいるため、水やりは基本的(気象条件により例外もある)に必要ない。
4)ガーデンで出るゴミを堆肥化し、ガーデンに戻す循環のシステムが取り込まれている。
5)無化学肥料、無農薬で管理している。土地に合う丈夫な植物は、健全で病気になることは少ない。害虫が気になる時のみ、手で取り除いている。
2017年アメリカで製作されたドキュメンタリー映画「Five Seasons : The Gardens of Piet Oudolf」が、日本で2018年10月に公開され、日本でも多くの人がアウドルフ氏をより知る機会となった。原題のFive Seasonsは、秋にはじまり秋に終わる5つの季節を巡るドキュメンタリーで、アウドルフ氏のガーデンに対する思いと考えが表われたタイトルといえる。
アウドルフ氏が作る庭は、花だけでなく、葉の色合いはもちろん、晩秋の枯れゆく姿、初冬の完全に枯れた姿まで鑑賞対象となる。特にシードヘッドと呼ばれる、タネがついて枯れる様子は、草花の成長過程に加え、植物の一生を知るという意味で重要であり、秋に始まり秋に終わることで、庭のサイクルが一巡する。
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